今日は、ノルチャでペコリーノチーズを作るパスクワ家の朝の風景をレポートします。 ペコリーノは羊の乳で作られるチーズ。 中部イタリア(ウンブリアやトスカーナ、サルデーニャ島など)では、古くから羊の放牧が盛んで、チーズ作りもかなり古くから行われてきました。 最古のチーズといわれるのはローマ産ペコリーノ。ローマ建国の神話にペコリーノも登場しています。 さて、師匠ジョバンニの遠い親戚にあたるというパスクワ一家。 昔ながらの製法を守り、毎日1ダースほどのチーズを手作りしています。 その一部始終をカメラに収めてきましたよ★ 朝8時。銅製の大鍋を火にかけ、羊の乳を温め始めます。 乳の温度が39℃に達すると、すかさず天然の凝固剤(羊の胃液)を加え、乳が焦げ付かないように混ぜ続けます。 ここまでの作業がパスクワ・ママのお仕事。乳は41℃に達しています。 銅鍋の肌に乳が生クリームのように粘ってきたように思ったその瞬間…。 パスクワ・パパも加勢して二人がかりでかき混ぜ始めました。 パパはミスティコという突起のある木製の棒で、ママは手で混ぜます。 しかもかなり激しく。 するとどうでしょう。ある時点で鍋の中はチーズのかたまりと乳とに完全に分かれているではありませんか。 そのかたまりをママがたぐり寄せ 糸で切り、 取り出します。 慎重に、慎重に。まるで生まれたての赤ちゃんをお風呂に入れているかのように。 それを銅鍋のわきにスタンバイしておいた木枠の中に押し込めます。 最初は「そんな大きいかたまり、入りっこない」と思っていたのですが、チーズに含まれた水分をギュギュッと押しながら抜いていくと、あら不思議。奇麗に木枠の中に納まりました。 朝の夫婦の共同作業…。 こうして全部詰め終わると、作業場の隣にある貯蔵室で乾燥させます。毎日塩をチーズの表と裏に載せて、塩味をつけていくというわけ。 チーズは一日にして成らず。 このように塩を取替えつつ、1ヶ月間寝かすとできあがりです。 1ヶ月で出荷するペコリーノはまだ熟成が浅く、比較的クセのない味です。なめらかで優しい、でもミルクの味はきちんとします。 今の時期なら、この早熟ペコリーノと旬のソラマメ(生)を食べるのが中部イタリアの春の味覚。ワインとともに食べると、最高なんです。 200頭の羊を飼うパスクワ一家。 冬の間は乳の出がすくないので、一日1ダースほどしかチーズが出来ません。しかもすべて手作り。手間ひまがかかっており、量産は不可能です。そういうわけで、手作りペコリーノ農家は激減。今では工場で大量生産されるものがほとんどだとか。 そこでスローフード協会は、この地域の手作りペコリーノをプレシディオに認定し、保護を促しています。 *次回は残った乳で作るリコッタチーズ作りをお伝えします。 Butako
by butako170
| 2008-04-09 06:05
| プレシディオ・食材
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