神戸新聞掲載
「スロー風土の食卓から」 
第10回 ワイン
  
   安くて美味 豊富な銘柄

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 イタリア人の血は、ワインでできてるんじゃないかしら。とにかくワインをよく飲む。一人当たりの年間消費量はおよそ五十㍑で日本人の十倍。トップのフランスに並ぶほど。

 毎日飲むので、こんなシステムも。田舎のワイナリーで大きな空瓶を幾つも抱えたおじさんに出会った。ガソリンスタンドのような機械のノズルを瓶に差込むと、ルビー色の液体が勢いよく飛び出す。ワインの量り売りだ。水と同値の1㍑たったの2ユーロ(約300円)。生産元まで足を運ぶと安くておいしいワインが手に入る。

 イタリアは古代ギリシャ人が「ブドウの大地」と呼んだころからワインの産地だ。ローマ時代は貴族の男しか飲めなかった。十世紀ごろ、修道院で醸造法が進歩し生産量が増えると、庶民にも広がった。
 現在、イタリア全土で多種のワインが作られている。重厚でビロードのような柔らかい口当たりの赤「バローロ」やタンニンの酸味が心地いい「キャンティ」。地元でしか手に入らない銘柄まで無数にある。

 味を決めるのは、ブドウの品種と風土、つまり畑の土質や日照時間の違い。とりわけ重要なのは生産者だ。「ワインは作り手に似る」という。同じ原料でも、作る人の個性ややり方で、いろんな印象に出来上がる。

 以前サルデーニャ島を訪れたとき、民宿で飲んだ農家お手製の赤ワインが忘れられない。ワイングラスでなく、ガラス製のぐい飲みで飲むのが地元流。一口飲んで、ブドウの濃い味と垢抜けない風味に、おや?規格品に慣れた私を驚かせた。しかし、すごい味だった。淡白な前菜から、子豚の丸焼きまで、すべての地元料理に合う。ついにはこれの虜(とりこ)に。注ぎつ注がれつ…。

 今でも昔のやり方でワインを作る農家がいる。市場には出てこない素朴な味。やっぱり田舎料理には、これが一番だ。

 (写真)地元のワインとサラミを召し上がれ。ワイナリーのお祭りで=モンテファルコ・ウンブリア州

                                      粉川 妙
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by butako170 | 2007-11-22 01:55 | 神戸新聞 掲載記事
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