神戸新聞エッセイ 7月13日夕刊掲載
「スロー風土の食卓から」 
第7回 サルデーニャ島
   
  良い食材をシンプルに調理

ローマから300km西に位置するサルデーニャ島には、豊かな自然が残る。7月は実習中の私も夏休み。この島で友人らと「食い倒れ」の休暇を楽しんだ。
 静かな海辺のアパートを借りて、毎日、眼下の海へ繰り出した。磯でトコブシやカニを取ったり、奇麗な石を拾って遊ぶ。近所の魚屋で新鮮な魚介を買うのが日課。地元風に料理し、みんなで食べた。

 穏やかで美しい海岸部とは一転して、内陸は荒涼とした大地が広がる。農業に向かない乾燥した気候のため、代々、ブタを飼いヒツジを放牧し、素朴に暮らしてきた。
 ヌーオロ市の国立公園で、農家が営む山あいの食堂を訪れた。客は私たちだけ。今日は仕込みをしない日だそうで「何もないですが、どうぞ」と笑顔で女性シェフ。
 パンをあてに自家製の赤ワインを飲みながら、料理を待つ。この島でパンと言えば、パリパリした食感のパーネ・カラサウだ。スナックみたい。軽くて保存が利くので、羊飼いの携帯食だった。

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 前菜は生ハムの盛り合わせ、朝鮮アザミのオイル漬けなどの保存食が6種類。旬の野菜を手間かけて加工した逸品。
 完熟トマトとチーズであえたパスタを平らげた後、お待ちかね、島の名物「子豚の丸焼き」が出て来た。炭火でこんがりと焼き、ミルト(ハーブの一種)の若枝をかぶせて香りを移す。熱々で食べても、この日のように冷製でもいい。肉質は柔らかで、控えめな脂肪の甘みが最高。ミルトの香りが食欲を刺激する。

 手作りの焼き菓子が運ばれる頃には、午後4時を回っていた。「何もない」どころではない。
 シェフは私たちを庭へ案内する。そこを走り回るのはブタ! おいしさの秘密が分かった。
 彼らは効率を優先しない。自然に呼吸を合わせ、野菜も家畜も人の都合で収穫を急がない。良い素材をシンプルに調理するので、味に力がある。
 健全で豊かな食の営み。サルデーニャで食の原点を教わった。

写真説明
農家の豊かな食卓=サルデーニャ島のヌーオロ市
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by butako170 | 2007-08-26 23:28 | 神戸新聞 掲載記事
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