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神戸新聞エッセイ 6月15日夕刊掲載
「スロー風土の食卓から」
第5回 市場    その街の文化が一目で

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 イタリアを旅する際、必ず市場に立ち寄ることにしている。
その土地の食生活がおおよそ分かるからだ。
 日本人に人気の観光地フィレンツェにある中央市場を紹介しよう。
駅から歩いていける。ぜひ、のぞかれるといい。
一階には牛モツ専門店が軒を連ねる。ホルモン料理に慣れ親しむ関西人の私でさえ見たこともない内臓がズラリ。香草と一緒に煮込むとおいしいよ、と店主が教えてくれた。
牛・ブタ肉も豊富で、部位ごとに土地独特の名前がついている。辞書にのってないから買う前に聞くしかない。
ハムやチーズの店が充実しているのもこの市場ならでは。チーズは日本国内に持ち込めるので試食して気に入ったらお土産にしてもいい。
 二階は目にも鮮やかな八百屋が軒を連ねる。冬は伝統料理リボリート(パン入りスープ)に欠かせない黒キャベツ、春はヤギのチーズと食べるソラマメ、夏から秋はマツタケに劣らぬ芳香を放つポルチーニ茸…。イタリアの市場には旬が健在だ。

 最もにぎやかな市場といえばシチリア島カターニアのペスケリア市場だろう。魚を売る屋台が路上に三十も並び、大きなカジキの頭をデンと置いた店もあってひときわ目を引く。
踊るシャコや脂がのったマグロ…。新鮮な魚介を荒っぽくて人なつこい男たちが威勢よく売る。
「コレいくら?」と聞けば「一㎏四ユーロ、どれくらいいる?」と袋に詰めはじめる始末。その熱意にほだされ、つい買ってしまう。
 この市場には上質のピスタッチオや香り高いオレガノ、首つき地鶏に旬の野菜などカターニア近郊の食べ物が集まる。
産地や生産者を知っている小売店での買い物は安心できる。とりわけ市場は地元で愛され、いつも賑わっている。血の通ったやり取りはスーパーマーケットでは決して味わえない。
その街の食、季節、人を知るために市場通いはやめられない。   

                                              粉川 妙

*次回の神戸新聞エッセイは7月27日(金)夕刊です。
お楽しみに!

by butako170 | 2007-07-24 01:07 | 神戸新聞 掲載記事
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