仕込み中の食材が一杯。糸で縛ってスープにつけてあるのが、チンギアーレ(猪) アロスト。固まり肉を縛り、塩・コショウ・ハーブをすり込んでオーブンで焼いたもの。途中ブロードをかけながら中まで火を通します。薄く切り分け、汁を煮詰たソースをかけて頂きます。さながらチャーシューのよう。 オジサンが今作っているのが、チンギアーレのミートソース。ひき肉は包丁でたたいて粗ミンチにしています。パスタやポレンタのソースにします。 そしてこちら、画面手前にあるのが、チンギアーレ イン ウーミド(煮込み)でございます。赤い方はトマト入り、他方がトマト無しです。説明を聞いている間、試食させてもらいました。牡丹鍋同様、じっくりコトコトと煮込んだ猪の肉は、柔らかく風味も豊かで最高。はやく開店にならないかなー。 さて、厨房は男性だけで取り仕切っています。みなさん、猪専門の猟師です。15人ほどのこの狩りチーム、狩猟犬の餌代を稼ぐためにこうしてイノシシ祭りを年に数回開催しているのだとか。イノシシの猟の時期は冬場だけなので、捕ってきたイノシシは冷凍保存しています。こうやってフェスタの度に必要分を解凍して使うのです。 それにしても皆さん、コックではないのに実に料理の手際がよろしいことで・・・。『料理って言ってもたいしたものじゃないよ。昔っからあるレシピだから、何も目新しいことをやってる訳じゃないさ。』 うーむ伝統料理の奥深さを見せつけられましたな。それにしても男子厨房に入り調理するべし・・・ですか。これも伝統なのでしょう。やはり猟人(猟師、漁師)は美味い食べ方を知っているといいますから。男の料理バンザイ! さて、1時間のインターバルの後、やっと開店です。(正確にいうとまだ開店まで30分あったのですが、帰りの電車がないといったら、早めに開けてくれました。感謝!) まず、チンギアーレのミートソースにbutakoはトルッテリーニを、CIZURUはペンネを注文しました。麺が茹で上がるのを待っている間、頼みもしていない猪のアフェッターテ ミスト(薄切りサラミの盛り合わせ)を持ってくるではありませんか。尋ねると、カメリエーレのおばちゃんと地元のおじちゃんがやってきて、『いいから、食べなさい。美味しいから』と勧めてくれました。右手が猪の生ハム、左手がサラミ、真ん中にのっているのがサルシッチャです。ブタのサラミと比べて複雑で濃厚な味です。特に生ハムは塩加減が程よく、猪の風味をより目立たせていて美味し。 ワインがすすみます。 ミートソースでプリマを食したあと、おばちゃんとおじちゃんに『全種類をちょっとずつ食べたい』とリクエスト。するとおじちゃんが、『僕が考えるから任せなさい。』とのこと。アロストとイン ウーミド、そしてブラッコニエラを一人前ずつ運んできました。うーん、二人で食べるには適量。ナイスおじちゃん。 アロストは本当に色も形もチャーシューさながら。味はローズマリーの風味高く、意外にサッパリとしていました。 そして最後に持ってきたブラッコニエラ(狩猟家という意)という骨付き肉の煮込みに初挑戦。美味い!骨から染み出るエキスがプラスされて、旨味120%。肉は骨からホロリと外れる柔らかさ。24時間酢水に肉をつけておき、その後塩コショウして、ローズマリーと一緒に炒めます。別鍋に玉葱、にんじん、セロリを炒めておいたものに肉を加え、赤ワインと少量のトマトペーストを入れてじっくり半日以上煮込むのです。 食後、猪料理に酔いしれていると、おじちゃんがシロップ漬けのイチゴを持ってきてくれたではありませんかー。濃厚で塩気の強い料理の後の心憎い計らい。うれしいじゃないですか。しかもお会計で大分おまけしてくれたのでした。 『だって、日本人がこの祭りにわざわざやって来てくれたんだから。出来る限りもてなしてあげたいじゃない。』・・・どうですこのホスピタリティ。厨房内もサロンもモンテボネッロの人々の人情で溢れていました。 今回は、知り合いに頼らずにポスターを見てやってきました。途中道に迷ったり、時間帯を間違えたり・・・とスムーズには事が運びませんでした。 でも苦労の甲斐あり、無事イノシシ料理を堪能でき、おまけに地元の方の暖かさに触れることができたのです。これこそが旅の醍醐味!やはりフィレンツェに住み地元でアンテナを張っているからこそ出来ることなんですよね。 イノシシ狩人の村モンテボネッロ。『狩の季節になったらまた来ます。』とちゃっかりおじさん達のアドレスを聞いて帰途についたbutakoたち。この冬は猪突するイノシシを避けながら、狩の現場からリポートするかもよん。 butako
by butako170
| 2006-06-16 23:45
| プレシディオ・食材
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