ローマ料理の夕べ  @カッシャ
d0033983_7224367.jpg友人シルヴァーナから、8月26日にカッシャでローマ時代のレシピを再現した食事会を行うから、興味があるならどう?と誘われました。
メニューのひとつには、ロヴェイアを使った料理もあるといいます。

面白そうなので参加を決定。
夕食の後は、彼女の家で1泊し、翌日はリエティ県のアマトリーチェで『スパゲッティ・アマトリチャーナ』のフェスタを訪れる…1泊2日の取材プチ旅行をすることにしました。

どうせならば『ローマ時代の夕食会』の主催者やシェフにも会ってみよう!
シルヴァーナの仲介で、当日料理が行われている幼稚園の厨房を訪れました。

シェフは『歴史料理人』で有名なマリーノ・マリーニMarino Marini氏。
歴史料理人という面白いネーミングは、彼が近年、古いレシピを紐解いて再現するところから付いています。

そのレシピに裏づけを与え、この食事会を学術的な面から支えるのが、パオロ・ブラコーニPaolo Braconi教授。ペルージャ大学で古代の農業経済と考古学を専門としています。
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この二人がタッグを組んで、行うメニューは後ほどご紹介するとして。
(写真:左がパオロ教授、右はマリーノシェフ)
売り上げ資金は、カッシャ郊外にあるVilla San Silvestroという村で現在行っている発掘のための資金を捻出することです。
もうかれこれ、資金集めのための大食事会は、今年で4回を迎えるのだとか。

d0033983_728102.jpgペルージャ大学考古学研究所のプロジェクトゆえ、オーガナイズや料理の下ごしらえの手伝いは、すべて学生たちが行います。
皆、屋外での発掘作業のため、真っ黒に日焼けした肌が、若さゆえにツヤツヤと輝いていてまぶしいワ。butakoもこんな時代があったのねぇー、と目を細めてしまった。

厨房に早朝から働きづめのマリーノ氏。
大鍋に炒めたソラマメに、別鍋で茹でたロベイアを一つにまとめて、そこでなにやら回しかけています。
「ニョクマムって知っているかな」
「あぁ、シェフ、もしやガルムのことを言いたいのでは!」
アジアの代表的な魚醤がニョクマムならば、ヨーロッパのそれはガルムですよね。
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このガルムは、僕の手作りさ。
サバの内臓を細かく刻んで、頭の部分も加えて、塩漬けにするんだ。
発酵すると自然にドロドロに解けて、3層に分かれる。一番上澄みの澄んだ液がガルムなんだ。

その手作りガルムを惜しみなくふりかけ、ハチミツを加えます。
豆料理に魚醤と甘味…十分ありえますよね。
和食だって魚ベースのダシに砂糖入れるじゃないの!

また、そう言ったかと思うと、

アピキウスは、本当に狡猾なヤツだよ。
料理のネーミングが実に巧妙なんだ。
わざと皇帝の名前をつけて、料理を壮大なものに見せている!


なーんて、飛ばしたと思うと

そのアピキウスの『料理帖』の著者は1人じゃなかったんだよ。
4人いたんだって~。


なんて驚きの発言をしたりします。
アピキウス(紀元前80年誕生~紀元40年頃没と推定)はかなり食道楽のグルメ野郎だったみたい。彼の書いた『料理帖』は、後世に何度も手が加えられていき4世紀に編纂されました。

一方、パオロ教授は、butakoが聞きたかったブタに関する質問に、すらすらと返答してくれ、思わず感激してしまいました。
私が求めていたのは、まさにこんな師匠!だったのですよ。

さて、午後早い時間に下ごしらえは完了。
butakoもゆで卵の皮をむいたり、リンゴを切ったりしたのですが、少しは役に立ったかな?
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古代ローマの晩餐A Cena con gli Antichi Romaniということなので、当然、給仕してくれる学生さんたちは、コスプレしていますよ★
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第一の皿:まずは、2種類のソースで、パンを食べます。
◆Tracta(Catone"De agricotura"大カトーの『農業論』からのレシピ)は、カルタ・ムージカというサルデーニャのパンで代用。ほぼ同じ作り方なのだそう。
◆Moretum(Virgilioのレシピ)は、リコッタチーズにニンニクなどを加えたソース。
◆Jecur Ficatum(Apicio"De Re Coquinaria"アピキウス『料理帖』)レバーのパテ。レバーの野性的な香りがガツンときて新鮮。

どちらも美味しかったのですが、それにあわせるワインが良くなかった。。。安物過ぎて風味も味もなかったので。。。

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第二の皿:まるでチャーシュー!パワフルなワンプレートディッシュ
◆Libum月桂樹の葉が押された、黄色いパン。ギュッと実が詰まっていてお腹にたまる!チーズ、卵入りのパンです。("大カトー『農業論』) 
◆Porcellum Traianeo ジューシーな豚肉を茹でてハーブをまぶし、燻製にしました。スライスしてモストコットをかけています。柔らかくスパイシーで少し甘みもある絶品豚料理には、トラヤヌス帝の名が付けられています!!(アピキウス『料理帖』)
◆Fave e Roveja Vitelliane ソラマメとロベイアを煮たものに、ガルム、ハチミツで味付けをしました。もう少しハチミツの甘みが強くても良いのでは。
アンチョビペースト入りの豆料理と味は変わらない。おいしかったですよ。上からふりかけているのは、卵の黄身です。きれいでしょ★ (アピキウス『料理帖』)
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第三の皿:ボリューム満点の豚料理
◆Minuto Maziano 茹でた豚、サルシッチャが細かく刻まれており、リンゴの甘い風味とともに煮込まれています。リンゴの甘みが、風味の強い豚を和らげていました。美味。(アピキウス『料理帖』)

第四の皿 〆のドルチェ
◆Piatto dolce di pere カスタードクリームにシロップ漬けの洋ナシを合わせ、最後に黒コショウをふりかけます。黒コショウは挽きたてのものを使ったほうが、さらに良かったでしょう。
でも味は悪くはありませんでした。

d0033983_7272223.jpg会場と予算の関係で4皿しか構成できなかったですが、ローマ時代の料理は最低でも8皿はあるので、1皿に3種類盛りなどを行い、ローマ時代の宴のスピリットを示したかった…とマリーノ氏。

手作りの調味料、未知の料理法への挑戦…昔のレシピの復元は、既成の料理を作るのとは違った別の楽しみが、強いていえば『ロマン』があるのかもしれません。

大成功をおさめた食事会。この軍資金でもって、Villa San Silvestroの発掘作業がうまくすすみますように。ローマ時代の衣装のまま輪になって、ディスコミュージックを踊る学生たちを見て、いまどきなのに、古代を夢見て一生懸命なギャップに、心が愉しく揺さぶられました。

一方、マリアーノシェフと奥様のジッジョさんは、憂いに満ちた表情で作業に向きあっていました。5年間、15歳の息子を交通事故で亡くしてから、生きる喜びを失ってしまった二人。

でも、息子が進みたかった考古学の道を、こういう形でなぞる事によって、失ったものを少しずつでも埋めよう、息子の心境に近づこうとしているんですね。
生きていたら同じ年であろう学生たちの踊る様子を、どんな心境でみていたのでしょうか。

皆のさまざまな夢や想い、ロマンが交錯したカッシャの夏の夜でした。
                              
                                       butako
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by butako170 | 2011-09-07 07:31 | ウンブリア地元ネタ
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