ファーヴァ・コットラの現場へ 『大人の遠足』その③
d0033983_18173283.jpg世界広しといえども、たった二つの村でしか取れないソラマメがあるといいます。
名はFava cotto’ra(ファーヴァ・コットラ).
ウンブリア州テルニ県のファットゥッチャ村とコッリチェッロ村です。
このソラマメ、通常のものの半分程度しかありません。
ずんぐりと丸っこい形をしていて、表面はでこぼこしています。色はくすんだベージュで、非常に固い質感をもっていて、まるで小石みたい。

旅の後半は、この生産者でプレシディオの責任者でもあるキアラさんを訪ねました。
車はテルニをぬけ、ナルニ・スカラを降りて西の方向へ。どんどん景色が牧歌的になってきました。寒村ファットゥッチャを通り抜け、舗装もしていない砂利道ゾーンへと突入です。農園の看板の順路どおりに、恐る恐る進みます。

すると、でてきました。
風力発電の現代的で小ぶりな風車、太陽光パネル…そうです、ここが自家発電農家とアグリツーリズモを営むキアラさんのご自宅なんです!
100%自家電力で生活し、そのうえアグリまでその電力で経営している、というウンブリアでもかなーりユニークな施設。(施設の説明はのちほど)

d0033983_18184914.jpgさっそくファーヴァ・コットラについて説明をしてもらうことにしました。
ファーヴァ・コットラは、小粒で非常にたんぱく質の含有量が多く栄養価に優れていながらも、その生産プロセスの煩雑さと調理法の面倒くささから、市場にはほとんど出回りませんでした。ファットゥッチャ村とコッリチェッロ村の家庭菜園で、自分たちの食用だけに、ひそかに作られてきました。

11月に種をまき、翌年の7月に刈り入れを行います。収穫の際は、苗ごと刈り取り、さやから実を出さない状態で1週間乾燥させておきます。(ロベイアと似ていますね)
その後、さやから実を取り出し、仕分けを行います。
仕分けは、すべて手作業で、ここが一番大変なところ。ます、①形がきれいで、商品としてパッケージできるもの…写真上 ②形や色が悪いが、味は別状ないもの(パテに加工)…写真下 ③生育過程でうまく育たず、商品にできないもの の3つに分けます。
③ですが、たとえば実が大きくなる課程で、雹(ヒョウ)にやられたりして、水分の吸収が美味く行かずに小さい豆ができてしまいます。そういうものは、パテにもできません。吸水をまったくしないため、どんなに煮ても固いままだからです。

そしてこのマメ、消費者の手も煩わせます。
皮が非常に固いため、下茹でしなければなりません。まず、他のマメ同様に、24時間水に漬けて吸水させます。それから一度水から火にかけ、沸点に達したら火を止めて、さらに半日置いておきます。それから、普通のマメ同様に、味付けをして2~3時間ほどコトコトと煮込みます。
なので、マメを食べるまで1日半を要する(!)わけです。
特別な技術はいらないのですが、いかんせん時間が必要です。

かつては、村人が、メルカートでファーヴァ・コットラを売ったはいいが、きちんと調理の説明をしなかったばかりに不評をかったことがあったそうです。このソラマメは、ただでさえ面倒くさい豆料理の下ごしらえを、いっそう面倒くさくしているという、忙しい現代人が敬遠するプロダクトなのでした。

キアラは、続けます。
でもね、これまで少量のソラマメを作っていた村人も、今では高齢化してきたのよ。
この村人の多くは大都市テルニの製鉄所で働いていて、定年退職後、自家菜園で小規模に野菜を作っているのね。だから、彼らが絶えてしまうと、このソラマメも作り手がなくなってしまうのよ。(2村で400人の住人のうち、専業農家は5軒だけ。あとの人たちは定年組みだそうです)
またこんなに美味しいソラマメを他の人たちにも、もっとPRしたい、と思いたったのが2007年。
だからプレシディオ品として登録してもらえれば、後継者不足とPRの二つが叶えられる、と思い、まず、この豆を研究しているアンジェリカ女史に連絡して、スローフード・テルニに掛け合ってみたんです。
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アンジェリカ女史は、ソラマメとファーヴァ・コットラの違いを科学的に検証し、論文にまとめたペルージャ大学の研究員です。彼女と結託してスローフード・テルニに話をしたところ、スローフード・ウンブリアを通して協会にアプローチすることができました。協会からは、資料一式を送るように、という依頼があり、そらからしばらくして、プレシディオ認定のための農学者が協会からやってきて、畑を見たり、調理法や味見をして帰っていきました。そして翌年2008年にスローフードのプレシディオ品として認可されました。

キアラさんは、「でも実は、一番苦労したのは、認定されてからなの」と言います。
認定後、二つの村の農家とリタイアした老人宅を一軒一軒回って、ファーヴァ・コットラを売るために、今年から少し多めに栽培してくれないか、とお願いして回ったそうです。

こうして準備を整え、実に2010年から、120kgもの出荷用のソラマメを作ることができたのです。そのソラマメを持って、各年トリノで開催されるサローネ・デル・グストへ村人たちと連れだって参加しました。商品をサローネの市場に出した結果、成功をおさめました。多くの人が味見をし、商品の売れ行きも上々だったとか。

「こうやって若い子が食の現場で、成功体験をしてくれることが、農業を始める何よりの動機付けになるのよ」。若年層の無職が問題になるのは日本もイタリアも同じこと。なんとかファーヴァ・コットラで、町おこしできないかと、キアラさんたちは、もくろんでいます。

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さて、気になる商品です。売り出しているのは、火を通していない豆、下茹でしたもの、そして茹でて裏ごししたピュレーの3商品あります。ピュレーは、ブルスケッタやパスタに絡ませても美味ですよ、との勧めから、ピュレーを購入しました。
d0033983_18221776.jpg味は、普通のソラマメの風味を強くした感じで、でんぷん質が結構しっかりしていて、ネットリした質感です。
たんぱく質の含有量が普通のソラマメよりも優れているらしいですよ。
少量のオリーブオイルで伸ばして、ブルスケッタにすると美味♪

最後に、なぜこの2村でしか採れないソラマメなのか、聞いてみました。
秘密は『土質』だそうです。ファーヴァ・コットラに適しているのは、この界隈の石灰質が極めて少ない土壌です。石灰質があると、豆は巨大化し、調理しても、煮えないのだそうです。ためしにテルニやスポレートに持っていっても、食べられる豆に育たなかった…とキアラさんは言っていました。

2歳の坊やのママであるキアラさん。
このプロジェクトのために、村人たちとの調和をはかりながら、精力的に活動しています。
女性は種を産み育てるもの…と言ったシルヴァーナの言葉が、ここでも深く胸に刻み付けられました。

さて、次回は、自家発電アグリの全貌をキアラの旦那さんのサンドロに語ってもらった様子をレポートします。エネルギー問題を抱える日本にも、良いサジェスチョンになるかもしれませんよ!

butako
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by butako170 | 2011-08-20 18:26 | プレシディオ・食材
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