カテゴリ:ウンブリア自然・山歩き( 18 )
半日でも十分楽しめる丘陵都市 トーディ
 
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中世の町並みと自然が美しく調和する丘陵都市トーディ。実は、ウンブリアに3年住むbutakoでありますが、トーディには行ったことがありませんでした。

先日、JITRAのお仕事で、トーディの紹介記事を書くことになり(ウンブリアを旅する記事で、書く都市は自分で決められる)、スポレートから車を飛ばして半日、行ってきました。
なんとスポレートから車で40分。こんなに近いのなら、もっと早くに行けばよかった!…そんなものですよね。近くても見知らぬ街は、遠くに感じるものです。。。

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10年以上前に、ケンタッキー大学の研究チームが行った、21世紀に向けて「環境の整った街」の調査で、ウンブリアの小都市トーディが世界一になった結果はご存知でしたか?

自然に抱かれた中世都市、静か、安全、人が穏やか…トーディを形容する言葉は枚挙に暇がありません。中世の町並みが保存された街は、車の通行も制限されているためか、日中でもとても静か。

街を縦横に走る石畳は風情があり、また突然、小道の視界が開けて遠くの丘が見渡せたり、と街歩きが楽しめます。


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街の目抜き通りG.マッテオッティ通り(ローマ通り→コルソ・カヴールと名が変更)には、商店や噴水のあるカフェテラスなど、目を楽しませてくれます。このテラスでカフェを飲みながら、くつろぐのも良さそう★

大通りを脇にそれると、ローマ時代の巨大な壁「ニッチオーニ・ロマーニ」があります。そう、ここもスポレートと同じウンブリア族が住んでいたのですねぇ。話はそれますが、ウンブリア州は、その全域にエトルリア人が住んでいたと思われがちですが、一般的には、テヴェレ川の西側にエトルリア人東側にウンブリア人が住み分けていたと言われています。

さぁ、マッテオッティ通りをてっぺんまで上りきると、ポポロ広場です。(写真はブログのはじめに)
ポポロ広場は、街の機能が集中した、心臓部。14世紀建造のプリオーリ宮(現市庁舎)や13世紀のポポロ宮(現観光案内所)、ドゥオーモが一堂に集まります。この広場、中世都市の貫禄がありますね。

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やはり圧巻は、ドゥオーモのフレスコ画かしら。
教会内部の正面入り口上の壁面に描かれたF.ダ・ファエンツァの『最後の審判』の巨大フレスコ画に、圧倒されてしまいました。全能の神、悪魔に逃げ惑う人間たち…その躍動感は、今にも壁から飛び出さんばかり。

現在、入り口付近が修復工事中なのですが、「神父さんに、いつ工事は終わりますか?」と聞くと、
「2ヶ月前から、工事しているけど、はて、いつになるかなぁ。」と首をひねっていました。そのちょっととぼけ加減がなかなか笑えました。


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他にも見所は、ドゥオーモから徒歩5分のサン・フォルトゥナート教会(13~15後半)ですね。
その教会の先のカーブの歩道にある見晴台からの景色は素晴らしい。
ウンブリアの大地や丘を一面に見下ろすことができます。

坂を下れば、ルネッサンス建築の傑作、サンタ・マリア・デッラ・コンソラツィオーネ教会が。巨匠ブラマンテの設計に基づいた1617年完成の教会は、城壁の外に唯一建っており、これがトーディの繁栄を象徴した最後の大事業だったそう。それ以降、街はペストや飢餓で、活力を失ってしまいます。

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半日もあれば、回りきれるトーディですが、唯一の難点が行きにくいことかなぁ。
ローマからは、F.S.線テルニでウンブリア鉄道に乗り換えて、トーディ・ポンテ・リオ駅下車。それからバスに乗って、海抜410mの旧市街まで上ります。
ローマからでは、トーディで一泊する必要がありますねぇ。
(効率よくローマから日帰り旅行をする場合は、butakoに依頼ください!テルニまで迎えに行きますよ!詳しくはこちらを。)
ウンブリアの滋味深い山の幸とおいしいワインなどのご当地グルメが、旅人を温かくもてなしてくれます。
今回は、トーディで知り合ったKAOKOさんと、地元のレストラン&エノテカPane&Vinoでランチを食べました。スローフード協会のカタツムリ認定店のとっておきのお店。
地元のワインと、イタリア各地のうまい料理が満喫できる★★★のお店でしたー。

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15ユーロのアンティパストの盛り合わせは、二人で分けても十分な量でした。
トーディから20km離れたワイン処、モンテファルコのワインが楽しめます。この日いただいたのは、スカッチャ・ディアボロ社のモンテファルコ・ロッソ。前菜の鴨の燻製や、ジビエのサラミと相性抜群です。
入り口には、植栽がアーチになっていて、かわいらしい雰囲気。

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プリモには、ストランゴッツィ アル タルトゥーフォを。ストランゴッツィはスポレート近郊の手打ち麺ですが、やはり本場スポレートの方が、私は好きだな。夏トリュフでしたが、豪快にたくさん振りかけてくれました。
デザートには手作りのクレマ・カタラーナが。これは絶品。

スローフード協会のプレシディオ品をふんだんに使った料理の数々でした。地元料理というよりも、イタリアのうまいもんが一堂に集まるレストラン、って感じ。エノテカなので、ワインの品揃えはピカ一ですよ。価格も良心的で、これはおすすめです。

こんな感じのトーディの半日旅行。後半はKAOKOさんと過ごせて、いろいろと話もできて、充実の旅行でした。やっぱり、旅はいいなぁ。
                                              butako


■トーディの食事処
○パーネ エ ヴィーノ Pane&Vino
住所:Via Augusto Ciuffelli 33, Todi (PG)Italy
電話番号: 0758945448
定休日:水曜日
営業時間:11:00-16:30、18:30-24:00
予算:1人20ユーロ~(飲み物別)
質量ともに納得のアンティパストミストは15€(飲み物別)。友人とシェアすると良い。手作りのドルチェもどれも美味。雰囲気の良い地元の人おすすめの一軒。
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by butako170 | 2009-09-17 05:38 | ウンブリア自然・山歩き
ヴァルネリーナの宝 その1
スポレートからわずか20kmのヴァルネリーナ地方。10年前にトンネルが開通するまでは、峠越えを余儀なくされたため、長らく秘境として手付かずの姿をとどめている渓谷です。ノルチャやカッシャなどの古代都市を育んできた一帯は、黒トリュフや生ハムの名産地として、世界に名を響かせています。
そんなヴァルネリーナ渓谷に月に3度は通うbutako。師匠から教わった秘密のスポットが満載の谷の魅力をアップしていきたいと思います。


大地が育む金の糸 サフラン 
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以前、野生グリンピース『ロベイア』の作り手として紹介した、チビタ・ディ・カッシャ村に住むシルヴァーナさんは、サフランの作り手でもあります。
サフランは、ご存知高級食材で、リゾットや煮込み料理に入れて黄金色に発色させたり、独特の風味を加える香辛料です。スペイン料理のパエリアや南仏のブイヤベースに入れることで、有名ですよね。

1gのサフランを得るためには300個の雌しべが必要なんですって!

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チビタ村やカッシャ界隈では、1300~1650年ごろまでサフランの名産地でした。
しかしそれ以降、なぜか農民たちはサフラン作りをパッタリとやめてしまい、近年まで途絶えたままになっていたのです。

 シルヴァーナさんはそんな史実を知って、数年前からサフラン復活に乗り出しました。カッシャの市立図書館で、古い資料を集めつつ失われた作り方を探します。
お隣のアブルッツォ州のサフラン農家を訪ねて行ったこともあるそうです。

最高品質を誇るサルデーニャ産の球根を購入し、栽培をはじめました。

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8月半ば…

サフランの植え付けの時期です。

butakoと師匠が訪れた時は、家族総出で球根の掃除を行っていました。

球根は毎年同じものを繰り返して使います。(日本産のサフランの球根も結構出回っていると聞いてビックリ)

大きいカセットに7つ。
すべての球根を丁寧にばらして、古い皮をはがすのは、骨が折れる作業。でもこれを怠るときちんと芽が出ません。

隣のおばあちゃんも球根の掃除にかり出され、やって来ました。

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 そして植え付け。

標高1200mの畑でサフランを植えつけているのは、はたしてここの村くらいではないでしょうか。

こんなに高原でも育つの?
他の生産地イランやギリシャ、サルデーニャなどとはまったく異なる環境…質問してみると「全体の1割くらいは寒さでやられちゃうけど、育つよー」ということでした。

ただし収穫時の10月~11月に、雪が降ることがあるので、そうなると雪を掻き分けながら、花を摘み取っていくのが大変なのだそう。


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植え付けは、深さ約20cm。お父さんがツルハシで筋を付けると、息子がそこへ球根を並べていき、そっと土をかけます。


こうして大量の球根は、地中に埋められて行きました。





およそ3ヵ月後…
d0033983_1442342.jpg 11月初旬に、butakoたちが訪れた時は、サフランの収穫期まっさかりでした。


サフランはクロッカスと同じ仲間で、薄紫で美しい花が楽しめます。

茎が地中を這い、地面の上に到達したらすぐ蕾を付け、花を咲かせるのです。

でも待った!

花が全開してしまうと、雌しべを取り出すのが非常に困難です。
そのため花の摘み取りは、開花する前の明け方に行われるのが常らしいのです。


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しかしbutakoが訪れたのは9時半。え?もう開花しちゃった?

いえいえ、この日はあいにくの小雨だったので、太陽は休業中。だから花も蕾のままでいてくれましたよ。

シルヴァーナさん一家は、収穫時には、毎日朝と夕方の2回、畑を見回り、蕾の摘み取りを行っています。


10月末から11月中旬の3週間は、朝夕の収穫と雌しべを取り出さなければならないので、大忙しなんですって。

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家に戻ると、雌しべ取りの仕事が待っています。
雌しべは非常にデリケートなので、傷つけたり折ったりしないように、優しく取り出します。女たちが食卓に花を広げて、大作業。


きっと600年前も同じ風景がこの村で見られたのでしょうね。


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サフランの雌しべは赤い部分の花頭とその下の白+黄色い部分の花柱から成っています。(発色するのは花頭のみ)

花柱を除いたものをプリッシィモ、花柱付きのものをザッフェラーノ・プーロと呼び、違いをはっきりさせています。プリッシィモがより高価なのは瞭然で、シルヴァーナさんのものは当然こちらの方です。

除いた雌しべは篩(ふるい)にのせ、木炭の弱火でじっくりと乾燥させて仕上げます。間違っても強火で焦がさないように。
良質のサフラン、時間がたつほど芳香も増すそうですよ。
古いサフランは香りが飛んでよくないと思っていましたが、正反対でした。
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手塩にかけて作るサフランのお値段ですが、1gなんと25ユーロ!!

これは協会がつけた値段だそうです。

その後、シルヴァーナのお嫁さんが作ったサフラン入りのクッキーを食べ、その強い芳香にびっくりしました。白ワインとオリーブ油で作る中部イタリアの素朴な焼き菓子が、サフランの味とベストマッチです。

色の美しさもさることながら、その強い香りに驚いてしまいました。

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そして色のテスト… 左は紅花の花弁、右はサフラン。どうです、この違い。発色がいいでしょ

本当にシルヴァーナのサフランは逸品ですよ。

見事に復活を果たしたチビタのサフラン。この成功事例を見て、スポレート郊外でもサフランの栽培が数年前から始まったそうです。サフランで町興しっていうのも、大いにアリですよね。

butako
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by butako170 | 2008-12-30 01:26 | ウンブリア自然・山歩き
初冬のスポレート界隈
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イタリアはすっかり冬です。

先週から大寒波がやってきて、寒いのなんのって。イタリアの頭からつま先まで(北から南という意味ね)、一気に冬モードになってしまいました。カンパーニャでも雪が降ったそうですよ。


さてさて、夜間学校に行きながら、昼間は原稿書きとイタリアの自然を満喫しております。
今年も恒例のコケモモ狩りに師匠と2回も行き、ジャムを作っては友人知人に配りました。



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秋のある日、カタツムリが近くの村で大量にいるのを発見。ロベルトと二人でそれを取って、5日間、ハーブだけを食べさせてカタツムリくんの体内をきれいに掃除し、おいしくいただきました♪ 
あ、イタリアってカタツムリも普通に食べるんですよ。そんなに驚かないで下さい。

以前から、年季の入ったマンマ(ノンナといってもいいかな)が、カタツムリを地元流に料理する話を聞いて、是非butakoも挑戦してみたかったのです。

また今年はリキュール作りに初挑戦。
リンドウ(genziana:ジェンツィアーナ)の根を白ワインに漬け込んで作るのですが、アブルッツォ州の人が非常に珍重しているのがこのリンドウのリキュールなのです。そのために師匠とその友人と三人で、山奥に入ってリンドウの根を採取しました。(大嵐の中!)

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その根は十分太さもあり、すごく生命感を感じました。

その皮をきれいに取って(まるでごぼうのようだわ)、うすーく切って、網の上にのせて乾かします。完全に乾いたら白ワインに四〇日間漬け込んで、リキュールにするのです。

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薄切りのリンドウの根をかじってみると「うへー!」メチャ苦い。これは特上のアマーロができそうですよ。



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そんなこんなで、しばらくbutakoの家には、簡易物干し台の上にはリンドウの根が干してあり、そのそばにはカタツムリが禊(みそぎ)をしながらひっそり30匹ほど居候している…という状態が続いていたのでした。

また、今年は頻繁に野草取りにも出かけています。週2回は野草のソテーを食べて、風邪の予防をしている我が家。そのうち西洋漢方も学んで、体に効くハーブを覚えていくのが、目標です。

                                          butako
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by butako170 | 2008-11-28 06:44 | ウンブリア自然・山歩き
カステッルーチョの花畑
 
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カステッルーチョのの花畑が見所を迎えたと聞いて、山の師匠ジョバンニと今週、行ってきました。3ヶ月前の雪景色が嘘みたいに、美しく花咲く大地。
そう、カステッルーチョ村のある「ピアン・グランデ」と呼ばれる平原には、毎年6月になると、レンズマメやポピーの花が一面に咲き乱れ、それは美しいのです。
写真は奥が黄色のレンズマメの花、手前の赤がポピーです。

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するとジョバンニが「特別な場所があるんだ」とピアン・グランデの隣り合わせになっている平原につれて行ってくれたのです。丘一つ隔てたこの平原は「ピアン・ピッコロ」と呼ばれています。
なるほど、お隣の大平原に対して小平原といったところでしょうか。

ここはピンクや紫、白、黄色とあらゆる花が咲き乱れていました。
本当に絶景です。

そして丘一つ隔てているだけなのに、知る人ぞ知る…といった場所で、観光客の姿は一切ありません。時々、羊の群れと羊飼いが、丘の草原にはべっているのを見るくらい。

本当にのどかです。

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と、いきなりジョバンニが地面に目をやり、一心に探しています。実は彼の目当ては「ドゥリーノ」というキノコ。サラダやグリルにしたら、とびっきりおいしいそう。
探し方にコツがあるらしく、それをButakoに伝授してくれました。
そして無心にキノコ探しです。
ちょうど前日に雨が降ったらしく、適度に湿り気と暑さがあるこの時期は、キノコの生える絶好のコンディション。実際、ジョバンニは次々にドゥリーノを見つけていきました。

Butakoはそれのお手伝い。まだキノコに目が慣れていないので、あまり要領を得ないものの、たまに見つけては大喜び。ナイフで茎の根元から切っていきます。
でも、たまに虫やウジがキノコの中に潜入しているので、それをナイフで掻きださなくてはなりません。(この作業、ちょっと苦手…)虫食いがあまりに多いようなら、廃棄。取り除けば何とかなるものは、バスケットに。
まったく虫食いが無いものは、オッティモ(最高)! (写真のものはオッティモです)

さて、ここでピアン・ピッコロで撮った様々な草花のご紹介。

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 群れて咲くなでしこ。思わず日本に思いを馳せます。

 イタリアでは幸福を運んでくれるという、てんとう虫。でもちょっと過密すぎますね。







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模様の美しい蝶。


名も知らない白い花。










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本当に多種多様な花が咲いていました。
当然これだけ花が多いと、比例して多いのがハチ。花の数以上にハチもいて、ブンブンとうるさいくらいに飛んでいたのでした。
でも刺したりはしませんのであしからず。
このハチで作る蜂蜜って、きっとものすごく美味しいのでしょうね。見つけたら是非、味見してみたいものです。

さてさて、半日かけて収穫したバスケット一杯のドゥリーノは、師匠と私で山分け。
その晩、我が家ではおいしいキノコ料理に舌鼓を打ったのでした。
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                                              Butako
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by butako170 | 2008-06-28 17:11 | ウンブリア自然・山歩き
念願のトランスマンツァ体験!(下)
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『家畜の道』とはよくできたもので、ノルチャとカステッルーチョを最短距離で結んでいます。つまり、一山越えるだけで両方の村を往来できるのです。でもこの一山…がなかなか大変なんですけどね。

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ひとたび広い舗装道路を横切ると、いよいよトランスマンツァの山場を迎えます。今までなだらかだった道も石ころだらけになり、あたりも岩肌が目立ち始めました。
 実はステファノ、ここでButakoが力尽きることを考え、友人にこの道路まで迎えをお願いしていたのです。でも疲れたなんて、口が裂けても言いませんでしたよ。だって、移動はこれからがクライマックス。これを見ずして帰るなんて、記者魂(なりきりButako)がすたると言うもの。迎えを丁重にキャンセルして、前進します。

 岩盤をさらに進みます。年老いた羊は疲れたのか舌を外に出し、息を荒くしています。
でもね、岩の割れ目生える草を食べながら歩くので、本当にゆっくりした歩みなんですよ。

 ノルチャの街がはるか下方に見えます。「ああ、もうこんなに山の上まで来たんだなぁ」、とノルチャの美しい風景を見下ろし、雪の残る山頂を見上げながら思いました。あたりは木々もまばら。吹きっさらしの風が容赦なくButakoたち羊たちを直撃します。
あたりは風の吹く音、動物の鳴く声以外、まったく音がありません。
なんという静けさ。なんという聖らかさ。

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荒野の真ん中に、たたずむ十字架。なんだろう…と思っていると、ステファノが言いました。「去年の夏、ノルチャの男性がここで亡くなったんだ。キノコ取りに行ったっきり帰ってこないから、村人が探しに行ったら、この場所に倒れていた。きっと雷に打たれたんだろうね」。彼は十字架の回りをきれいに掃除して、その場をそっと離れました。
 自然は美しい。でも時に脅威となります。
ステファノは事実を淡々と語るだけでしたが、自然の恐ろしさと人間の無力さをひしと感じました。

 
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さて、今回、難所が一つあるとしたら、山頂に至る最後の坂道でしょう。
なぜなら10年ぶりにルートを変更するからです。山頂までは坂が続き、道というより、だだっ広い草原になっています。彼がとってきた『傾斜の強い最短ルート』を変更し、『なだらか+ターンを繰り返すルート』に初挑戦。しかし肝心の羊が言うことを聞いてくれません。
それもそのはず。年老いた羊は以前のルートを覚えているので、そちらを頑なに通りたがります。若い羊もそれに同調します。

ステファノは、2匹の犬に合図して先導を促しました。
でも犬も言うことを聞きません。というよりも主人の命令の意味がよく飲み込めていないようです。
前進する羊たちを左折させるためには、犬は右回りで下手の羊に近づき、徐々に上へ方向転換させなければなりません。でも犬は何度も左方向に走り出しました。ステファノがいくら右にうながしても、すぐ左へ言ってしまうのです。

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バイ!デストラ.(右へ行け!) 犬に合図し出発をうながす。
ノー!(違う)            犬の首輪を持って、動きを止める。

なんと、このやりとりを繰り返すこと、20回。
ようやく犬たちも最後には理解し、480頭の羊は無事に新ルートを通ることが出来ました。

「犬の命令には忍耐がいるんだよ」とステファノ。いやぁ、本当に忍耐強い。Butakoなら途中で怒って声を荒げるだろうに、彼は冷静に20回も掛け声をかけ続けたのです。
「犬をね、絶対に叩いてはいけないんだよ。」とも。
「え?しつけの一環で叩くのって普通じゃないの?」
「犬を叩かずにしつけると、信頼関係が生まれるんだ。俺は一度も叩いたことはないね。」
えー?!そうだったんですね。知りませんでした。

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山頂に着いた途端、眼下に広がるのはカステッルーチョの大平原(グラン ピアノ)と雪を被ったベットーレの山々。春の太陽に反射して草は光り、雪の白さも光ります。
生命の息吹が充満しているそんな、風景。
美しい。本当に美しい。

吹きすさぶ向かい風に、負けじと歩を前へと進ませます。
と、同時に、着いた。やっと着いた…
平原を前に、言いようのない充実感が心に満ちていきました。

 「トランスマンツァは本当に美しい。10年やっているけど、毎回感動するよ」。

 
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水のみ場で憩う羊たち。たんと飲んでね。                                                                            Butako
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by butako170 | 2008-04-25 01:43 | ウンブリア自然・山歩き
春の散策  銀世界カステッルッチョ
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あいにくの天気だったパスクワ(イースター)も、パスクエッタ(翌日の祝日)も終わり、イタリアに日常が戻ってきました。雨が降り続き、寒々としていましたが、旦那の弟さんが昼食に呼んでくれたり、マンマの家で大夕食会をしたり…と大家族で和やかにイースターを過ごしました。

今週の水曜日は、山の師匠ジョバンニとカステッルッチョCastelluccio村に行ってきました。
スポレートから30kmほど行ったのヴァルネリーナ渓谷の奥手に、ひっそりとたたずむ村。でも夏場は、観光客であふれて返っているそう。その理由は…。

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ノルチャから急な山々を縫うように車を走らせると、(写真はノルチャの街々)

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 突然、ぽっかりと平地が現れました。
標高1000mもある地点に広がるのは、5km四方はある大平原Pian Grande(ピアン・グランデ)です。この平原は初夏にポピーやレンズマメ、その他の花々が一斉に咲き乱れ、高原のお花畑になります。それを一目みようと観光客が全イタリアからやってくるというわけ。Butakoはまだ見たことがないのですが、北海道のラベンダー畑にも勝るとも劣らない美しさ、とのこと。6月頃が開花時期なので、是非見てみたいと思います。
そのピアン・グランデ一体は国立公園になっていますが、平原を突っ切って丘を登りきったところにカステッルッチョ村はあります。

さて、当日はイースターから降り続いた雪のおかげで、銀世界のピアン・グランデ。
今日は、ジョバンニの幼馴染みロマーノさんも同乗します。二人のねらいはスキー。この大平原をトレッキングのスキーで楽しもうというのです。

大平原はすっかり雪に覆われていて、四方に2000M級の山々がそれを取り囲んでいます。小さな湖がところどころにあって、その部分だけ黒い瞳のように、ぽっかりとくぼんでいるのです。小川の割れ目が、白い平原を二分します。太陽でキラキラと反射する雪。青い空…。
しばらくその神秘的な景色に、一同見入ってしましました。

そして、Butakoをピアン・グランの道(舗装道路)の真ん中におきざりにして、二人はあたりを散策…。(もちろん合意のもとですよ!)ノルチャ出身のお二人、雪の中のスキー歩行はお手の物といった感じです。
Butakoはこの壮大な風景を楽しみながら、一直線に続く道をカステルッチョまでウォーキングです。すぐそばにあるように感じた村も、歩くと結構遠くて、1時間少々を要しました。

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 村に到着して、ジョバンニたちと落ち合い、お待ちかねのランチタイムです。彼らのなじみのトラットリアで腹ごしらえ。

カステッルッチョ名物はレンズマメ。凸レンズみたいな形の小粒の豆には、栄養分がたっぷり。なぜここのが珍重されているかというと、冷涼な気候のため、味の凝縮した小粒の実ができるから。しかも寒さで害虫がこないので、無農薬で育てられています。
 プリモは…
・レンズマメのスープにこんがり焼けたブルスケッタを添えて。スポレート産のオリーブ油を垂らして食べると風味が格段にあがります。
・ファッロ(スペルト小麦)をポルチーニ茸と黒トリュフソース、生クリームでリゾットにして。

 セコンドは去勢羊と豚のグリルの盛り合わせを。
去勢羊はクセはないのに旨みは満点で、焼け目こんがりで美味でした。

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 デザートに自家製ビンサント(デザートワイン)と固焼きビスコッティ(トッツェッティ)が出てきましたぞ。頼んでもないのに、このサービス。
ジョバンニたちの常連ぶりが伺えます。
ビスコッティをワインに浸しながら食べると…素朴な菓子と手作りの香り高いワインに、もう、最高!
村人たちもマンマ・シェフもこの輪に入ってきてみんなで、日が傾くまで語りあいました。
次回は花の時期に訪れたいものです。



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               Butako
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by butako170 | 2008-03-28 02:11 | ウンブリア自然・山歩き
ピッシニアーノでのんびり、まったり
スポレートから車で15分の小さな村、ピッシニアーノ。
この辺りはなだらかな丘が続き、オリーブオイルで有名な場所です。
この日曜日、街の音楽フェスタが行われたので、その様子をレポートします。

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↑ピッシニアーノは丘の上にある村。村まで行くのに細い道を歩いて上ります。
今このへんはアーモンドの花、真っ盛りです。桜に似て可憐で、かわいい薄ピンク色。

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↑ オリーブ畑の一角にも、美しく咲くアーモンド。
春が来ると、その木の存在を知らせてくれます。実もおいしいけど、花も素敵です。


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↑やっと村の入り口に到着。この見晴らしの良さそうな家屋は、レストランとして営業中。
ちょっとお洒落な無国籍料理を出す店だとか。


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↑石畳の坂をひたすら上がって…。
この村は15世帯ほどが暮らしています。どの家の前も現代アートのオブジェが置かれており、斬新で新古のミスマッチが面白い。
実際、村には何人かアーティストも住んでいます。古きに住まい新しきを発信する。


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↑頂上のお城に到着~♪
駐車場から歩くこと20分、結構いい運動になりました。
このお城の空きスペースでミニ演奏会と見世物が行われます。

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↑スタンバイ中のピエロ。開演をいまかと待つ坊や。
二人の間で何やら交わされるヒミツの会話。

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↑お待ちかね演奏会の始まりです。
東欧系のアップテンポの曲に、お客はごきげん。
会場で振舞われたブルスケッタとワインを片手に、のんびりした時を過ごしました。
はじめはちらほらだったお客も、30人以上集まりました。これは多いほう。

その後、ミニサーカス団のパフォーマンスがあった模様ですが、Butakoは途中、眠たくなってしまったので、村の入り口近くのオリーブ畑で野草をつんでいました。
野草が入った袋を片手に、戻ると、催しはすべて終了。おやまあ。

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↑あたりはすっかり夕焼けに染まり、春の野原をオレンジに塗り替えました。
坊やたちもそろそろ家に帰る時間だね。

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その後、村の友人宅の台所を借りて、野草のサラダを作り、皆に振る舞ったButako。
日がどっぷり暮れるまで、飲みしゃべり続けました。
春の日ののどかーな一日でした。

                                              Butako
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by butako170 | 2008-03-07 01:23 | ウンブリア自然・山歩き
師匠と訪ねた村 ロレイヴォ村のアミーコ兄弟
 
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2月4日「春の野草採り」のブログのその後…
 師匠と野草を採りに行った後、ある村に立ち寄りました。
ロレイヴォ村(Loreivo)は人口がたった10人足らずの小さな小さな村です。
3世帯がひっそりと軒を連ね、羊やニワトリを飼い、畑を耕し…昔と変わらない自給自足の生活を営んでいます。
古くからその村を守ってきたアミーコ一家。
師匠ジョバンニは彼らと顔見知りだそう。教会前の三叉路で、アミーコ兄弟の長男アルマンドさんにばったり出くわすと、ジョバンニは彼と気さくに話し始めました。

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 アルマンドさんは若い頃は神父をしていたという経歴の持ち主。
村で唯一の小さな教会は、30年前、屋根は落ち朽ち果てていたものを一家が修復したものです。教会内に興味シンシンだったButakoを察した師匠は、アルマンドさんに鍵を借り、中をみせてもらいました。



正面に修復されたフレスコ画が一枚ある以外は、何もない簡素な教会。
でも修復した彼らの愛情がたっぷりです。


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 その後、師匠とこの村のはずれにある高台に行って、ランチタイムです。足場の悪い斜面を登っていくと、30分ほどで頂上に到着。
200平方メートルほどの小さな平地が広がっていました。頂上は、かつて集落があったという場所です。今はむき出しになった岩盤がひっそりと横たわっているだけ。
「スポレート軍がね、この村に攻め入り、村を焼いてしまったんだよ」とジョバンニ。

動機はたいしたことではありませんでした。

昔むかしの話。ある年、家畜に与える干草が不足しました。この村の神父(スポレート出身)が、「スポレートに干草を分けてやって欲しい」と村人に頼んだそう。村人は二束三文の干草に高い値段をつけたものだから、それに怒ったスポレート人たちが村を焼いてしまったそう。
 かつて壁だった石をみつつ、人の営みの果かなさを思いました。
 
さて、ランチを終え高台を降りると、アルマンドが牧草地で作業をしています。
白い毛並みが麗しいキアーナ牛を30頭ほど飼っています。
キアーナ牛はTボーンステーキにすると最高のトスカーナ由来の牛。たいへん高価で、たいへん美味。

そして羊が20匹ほど。かつては300匹いたのですが、アミーコ一家の高齢化に伴い世話が難しくなり、売ってしまいました。羊のたくさんいた頃は、毎日新鮮な乳でペコリーノやリコッタなどのチーズ作りもしていたそう。ああ、できたてのリコッタチーズはさぞ、おいしかったでしょうに★

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 アルマンドさんは、Butakoたちをある部屋へと呼びました。


なんとそこはカンティーナ。彼らはワインも作ってます。農家の作るワインの美味さに目覚めた
Butako。垢抜けないけど、力強い味は一度ハマると抜け出せません。


アミーコ一家の自家製ワインは、まだ発泡途中の、ブドウの濃い味がするとびっきりのワインでした。Butakoも師匠もゴキゲン。



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 「これも食べな」と差し出してくれたのは、テルニの名菓パン・ペパート!アーモンドやクルミ、オレンジの皮などをチョコで固めて作ります。決め手はペッペ(コショウ)を入れること。


 スパイシーな大人のお菓子は、野性味あふれるワインに相性バツグン!
ほろ酔いの二人。おしゃべりの口がとまりません。




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 アミーコ一家は男ばかりの4人ぐらし。兄弟助け合って今まで暮らしてきました。でも去年、末っ子が病気で亡くなり、あと一人も入院しています。
「わしらが若いときは、嫁さんをもらわなくても何の不自由も無く楽しく暮らしてきたんだ。」年老いたときの事など考えもしなかった…といいます。
7人兄弟のアミーコ一家。両親の勧めに従い、3人は結婚しこの地を離れ、残る4人でこの村を守ってきました。(村の大部分の土地はこの一家のものなのです)
「嫁をもらわなかったこと、今になってちょっぴり後悔さ」。
透き通る青い目で、じっと一点を見つめながらアルマンドさんは静かにいいました。

家畜を飼い、土地を耕す生業も、担い手がなければやがて消えていくでしょう。この村から見えるすべての景色を神話混じりに語ってくれた彼。代々先祖から口承された尊い物語も、後世に伝わることなく消えてしまうのでしょうか。
どうか新しい担い手が現れますように…帰りの車のなかで、そう願わずにはいらないButakoなのでした。

                                           Butako

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by butako170 | 2008-02-22 06:52 | ウンブリア自然・山歩き