ヴァルネリーナの宝 その1
スポレートからわずか20kmのヴァルネリーナ地方。10年前にトンネルが開通するまでは、峠越えを余儀なくされたため、長らく秘境として手付かずの姿をとどめている渓谷です。ノルチャやカッシャなどの古代都市を育んできた一帯は、黒トリュフや生ハムの名産地として、世界に名を響かせています。
そんなヴァルネリーナ渓谷に月に3度は通うbutako。師匠から教わった秘密のスポットが満載の谷の魅力をアップしていきたいと思います。


大地が育む金の糸 サフラン 
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以前、野生グリンピース『ロベイア』の作り手として紹介した、チビタ・ディ・カッシャ村に住むシルヴァーナさんは、サフランの作り手でもあります。
サフランは、ご存知高級食材で、リゾットや煮込み料理に入れて黄金色に発色させたり、独特の風味を加える香辛料です。スペイン料理のパエリアや南仏のブイヤベースに入れることで、有名ですよね。

1gのサフランを得るためには300個の雌しべが必要なんですって!

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チビタ村やカッシャ界隈では、1300~1650年ごろまでサフランの名産地でした。
しかしそれ以降、なぜか農民たちはサフラン作りをパッタリとやめてしまい、近年まで途絶えたままになっていたのです。

 シルヴァーナさんはそんな史実を知って、数年前からサフラン復活に乗り出しました。カッシャの市立図書館で、古い資料を集めつつ失われた作り方を探します。
お隣のアブルッツォ州のサフラン農家を訪ねて行ったこともあるそうです。

最高品質を誇るサルデーニャ産の球根を購入し、栽培をはじめました。

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8月半ば…

サフランの植え付けの時期です。

butakoと師匠が訪れた時は、家族総出で球根の掃除を行っていました。

球根は毎年同じものを繰り返して使います。(日本産のサフランの球根も結構出回っていると聞いてビックリ)

大きいカセットに7つ。
すべての球根を丁寧にばらして、古い皮をはがすのは、骨が折れる作業。でもこれを怠るときちんと芽が出ません。

隣のおばあちゃんも球根の掃除にかり出され、やって来ました。

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 そして植え付け。

標高1200mの畑でサフランを植えつけているのは、はたしてここの村くらいではないでしょうか。

こんなに高原でも育つの?
他の生産地イランやギリシャ、サルデーニャなどとはまったく異なる環境…質問してみると「全体の1割くらいは寒さでやられちゃうけど、育つよー」ということでした。

ただし収穫時の10月~11月に、雪が降ることがあるので、そうなると雪を掻き分けながら、花を摘み取っていくのが大変なのだそう。


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植え付けは、深さ約20cm。お父さんがツルハシで筋を付けると、息子がそこへ球根を並べていき、そっと土をかけます。


こうして大量の球根は、地中に埋められて行きました。





およそ3ヵ月後…
d0033983_1442342.jpg 11月初旬に、butakoたちが訪れた時は、サフランの収穫期まっさかりでした。


サフランはクロッカスと同じ仲間で、薄紫で美しい花が楽しめます。

茎が地中を這い、地面の上に到達したらすぐ蕾を付け、花を咲かせるのです。

でも待った!

花が全開してしまうと、雌しべを取り出すのが非常に困難です。
そのため花の摘み取りは、開花する前の明け方に行われるのが常らしいのです。


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しかしbutakoが訪れたのは9時半。え?もう開花しちゃった?

いえいえ、この日はあいにくの小雨だったので、太陽は休業中。だから花も蕾のままでいてくれましたよ。

シルヴァーナさん一家は、収穫時には、毎日朝と夕方の2回、畑を見回り、蕾の摘み取りを行っています。


10月末から11月中旬の3週間は、朝夕の収穫と雌しべを取り出さなければならないので、大忙しなんですって。

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家に戻ると、雌しべ取りの仕事が待っています。
雌しべは非常にデリケートなので、傷つけたり折ったりしないように、優しく取り出します。女たちが食卓に花を広げて、大作業。


きっと600年前も同じ風景がこの村で見られたのでしょうね。


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サフランの雌しべは赤い部分の花頭とその下の白+黄色い部分の花柱から成っています。(発色するのは花頭のみ)

花柱を除いたものをプリッシィモ、花柱付きのものをザッフェラーノ・プーロと呼び、違いをはっきりさせています。プリッシィモがより高価なのは瞭然で、シルヴァーナさんのものは当然こちらの方です。

除いた雌しべは篩(ふるい)にのせ、木炭の弱火でじっくりと乾燥させて仕上げます。間違っても強火で焦がさないように。
良質のサフラン、時間がたつほど芳香も増すそうですよ。
古いサフランは香りが飛んでよくないと思っていましたが、正反対でした。
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手塩にかけて作るサフランのお値段ですが、1gなんと25ユーロ!!

これは協会がつけた値段だそうです。

その後、シルヴァーナのお嫁さんが作ったサフラン入りのクッキーを食べ、その強い芳香にびっくりしました。白ワインとオリーブ油で作る中部イタリアの素朴な焼き菓子が、サフランの味とベストマッチです。

色の美しさもさることながら、その強い香りに驚いてしまいました。

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そして色のテスト… 左は紅花の花弁、右はサフラン。どうです、この違い。発色がいいでしょ

本当にシルヴァーナのサフランは逸品ですよ。

見事に復活を果たしたチビタのサフラン。この成功事例を見て、スポレート郊外でもサフランの栽培が数年前から始まったそうです。サフランで町興しっていうのも、大いにアリですよね。

butako
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by butako170 | 2008-12-30 01:26 | ウンブリア自然・山歩き
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