念願のトランスマンツァ体験!(下)
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『家畜の道』とはよくできたもので、ノルチャとカステッルーチョを最短距離で結んでいます。つまり、一山越えるだけで両方の村を往来できるのです。でもこの一山…がなかなか大変なんですけどね。

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ひとたび広い舗装道路を横切ると、いよいよトランスマンツァの山場を迎えます。今までなだらかだった道も石ころだらけになり、あたりも岩肌が目立ち始めました。
 実はステファノ、ここでButakoが力尽きることを考え、友人にこの道路まで迎えをお願いしていたのです。でも疲れたなんて、口が裂けても言いませんでしたよ。だって、移動はこれからがクライマックス。これを見ずして帰るなんて、記者魂(なりきりButako)がすたると言うもの。迎えを丁重にキャンセルして、前進します。

 岩盤をさらに進みます。年老いた羊は疲れたのか舌を外に出し、息を荒くしています。
でもね、岩の割れ目生える草を食べながら歩くので、本当にゆっくりした歩みなんですよ。

 ノルチャの街がはるか下方に見えます。「ああ、もうこんなに山の上まで来たんだなぁ」、とノルチャの美しい風景を見下ろし、雪の残る山頂を見上げながら思いました。あたりは木々もまばら。吹きっさらしの風が容赦なくButakoたち羊たちを直撃します。
あたりは風の吹く音、動物の鳴く声以外、まったく音がありません。
なんという静けさ。なんという聖らかさ。

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荒野の真ん中に、たたずむ十字架。なんだろう…と思っていると、ステファノが言いました。「去年の夏、ノルチャの男性がここで亡くなったんだ。キノコ取りに行ったっきり帰ってこないから、村人が探しに行ったら、この場所に倒れていた。きっと雷に打たれたんだろうね」。彼は十字架の回りをきれいに掃除して、その場をそっと離れました。
 自然は美しい。でも時に脅威となります。
ステファノは事実を淡々と語るだけでしたが、自然の恐ろしさと人間の無力さをひしと感じました。

 
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さて、今回、難所が一つあるとしたら、山頂に至る最後の坂道でしょう。
なぜなら10年ぶりにルートを変更するからです。山頂までは坂が続き、道というより、だだっ広い草原になっています。彼がとってきた『傾斜の強い最短ルート』を変更し、『なだらか+ターンを繰り返すルート』に初挑戦。しかし肝心の羊が言うことを聞いてくれません。
それもそのはず。年老いた羊は以前のルートを覚えているので、そちらを頑なに通りたがります。若い羊もそれに同調します。

ステファノは、2匹の犬に合図して先導を促しました。
でも犬も言うことを聞きません。というよりも主人の命令の意味がよく飲み込めていないようです。
前進する羊たちを左折させるためには、犬は右回りで下手の羊に近づき、徐々に上へ方向転換させなければなりません。でも犬は何度も左方向に走り出しました。ステファノがいくら右にうながしても、すぐ左へ言ってしまうのです。

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バイ!デストラ.(右へ行け!) 犬に合図し出発をうながす。
ノー!(違う)            犬の首輪を持って、動きを止める。

なんと、このやりとりを繰り返すこと、20回。
ようやく犬たちも最後には理解し、480頭の羊は無事に新ルートを通ることが出来ました。

「犬の命令には忍耐がいるんだよ」とステファノ。いやぁ、本当に忍耐強い。Butakoなら途中で怒って声を荒げるだろうに、彼は冷静に20回も掛け声をかけ続けたのです。
「犬をね、絶対に叩いてはいけないんだよ。」とも。
「え?しつけの一環で叩くのって普通じゃないの?」
「犬を叩かずにしつけると、信頼関係が生まれるんだ。俺は一度も叩いたことはないね。」
えー?!そうだったんですね。知りませんでした。

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山頂に着いた途端、眼下に広がるのはカステッルーチョの大平原(グラン ピアノ)と雪を被ったベットーレの山々。春の太陽に反射して草は光り、雪の白さも光ります。
生命の息吹が充満しているそんな、風景。
美しい。本当に美しい。

吹きすさぶ向かい風に、負けじと歩を前へと進ませます。
と、同時に、着いた。やっと着いた…
平原を前に、言いようのない充実感が心に満ちていきました。

 「トランスマンツァは本当に美しい。10年やっているけど、毎回感動するよ」。

 
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水のみ場で憩う羊たち。たんと飲んでね。                                                                            Butako
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by butako170 | 2008-04-25 01:43 | ウンブリア自然・山歩き
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