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100%自家発電のアグリツーリズモへ 『大人の遠足』その⑤
そして、別館の大きな棟へと移動します。
ここの1階にフロント兼オフィスがあるのですが、冬の間の暖房は、なんと意外な方法が取られていました!
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部屋の外側には、ブラックボックスが備え付けられており、そのなかには、長く黒い一本の管がグネグネと張り巡らされています。名づけて太陽熱温風システム。管の中で温まった空気は、直接オフィスに送られます。
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ただし、管をオフィスにつなぐだけでは、送風されないので、出口にはモーターをつけ、それでファンを動かし、オフィス内へと温風を送り込むのです。
(写真左:温風を送るモーター 右:オフィス内に引き込まれた赤い管)

100%自家発電のアグリツーリズモへ 『大人の遠足』その⑤_d0033983_1759484.jpg「この機械はね、作るのに10ユーロほどしかかからないんだよ。ジュースの空き缶を黒く塗ってつなぎ合わせ、出口に廃パソコンの部品(プロペラ付きモーター)を取り付ければ、完成さ」

手軽にできる温風システム。壁に穴を開けないといけませんし、少々スペースも必要ですが、郊外型の持ち家ならば、問題なさそうです。

他にも、節電の仕組みがたくさんありました。

100%自家発電のアグリツーリズモへ 『大人の遠足』その⑤_d0033983_17595334.jpg天井部分を丸く開けて、その側面にアルミを貼り、外の明かりを取り込めば、立派は明かりになります。

夜になると、自然エネルギー由来の電気に切り替わり、人が通る時だけセンサーが感知して点灯するシステム。賢い!

太陽エネルギーで電熱器を発熱し、料理する機械!!!


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アグリの部屋にあるドライアーは、温度設定と風力を変えています。
1000Wかかるところを250Wに設定。その分、髪を乾かす時間が3分から6分へと倍時間がかかってしまいますが、電力は75%もカットできます。
(アグリの部屋は一つひとつデザインも異なっていて、どの部屋もデザインがお洒落です。)

100%自家発電のアグリツーリズモへ 『大人の遠足』その⑤_d0033983_1865087.jpg(写真:アグリ内の会議室。勉強会など開かれます。)

サンドロはいいます。
「今、自然エネルギーが叫ばれているけど、石油エネルギー時代に享受していた消費生活を変えないまま、自然エネルギーに移行してもダメなんだ。まず少ないエネルギーで生活する仕組みを確立してから、自然エネルギーに取り組まなくては。効率の良い石油エネルギーを100%自然エネルギーで代替するのは、とうてい無理な話なんだよ」

まず省エネ生活に切り替える。
たしかに、森の空気を送ったり、太陽熱温風システムを家の仕組みに取り入れてしまえば、今までよりも少ないエネルギーで生活することができますよね。
一理あるよなー。

100%自家発電のアグリツーリズモへ 『大人の遠足』その⑤_d0033983_186913.jpgでも、上記システムを個人で行うには限界があるし、第一、都会暮らしでは、森もないし、かなり建物の制約も受けるので、難しいのでは、と思いました。でも少ない電力で暮らしていく工夫、というのは、どこに住んでいても取り組めることではないでしょうか。

来て、見て、触れて…

このアグリツーリズモを作った最大の理由は、自家電力で動く家に滞在し、実際に体験してほしかったから。普通の家に住むのと同じ感覚で、快適に過ごしてもらえることが実感できたら、自然エネルギーに対する理解も得られやすい、と思ったから、とサンドロ。


100%自家発電のアグリツーリズモへ 『大人の遠足』その⑤_d0033983_1845215.jpgまた消費電力が一目で分かるパネルが、フロントにあるため、実際、使った電力が『可視化』できるのもユニークです。
そういえば、日本の一般家庭でも、エネルギーの可視化パネルを導入してから、節電を心がけるようになった、という話を聞いたことがあったなぁ。

一目瞭然だと、節電もやり甲斐があるというもの。
ゲーム感覚でできるのもいいですよね。

この土地には、井戸がなく、雨水を利用して畑にしていたのですが、1960年代に持ち主が放棄したため荒れ放題だったそうです。
そこを99年に、サンドロとキアラが買い取り、畑やアグリにしていったのだそう。
サンドロはアフリカで観光業を行っていたので、水のない地域で快適に暮らすノウハウもあり、一方、キアラはシチリアで農学者として働いていたので、灌漑や水の少ない農業の知識などが豊富だったのです。そんな二人が目指した快適で自然に優しいアグリツーリズモ。
数時間の滞在でしたが、とても面白かったです。

Etic Italia Centro Sviluppo Energie RinnovabiliVocabolo Inano - Frattuccia Guardea (TR)
tel/fax : +39 0744 945071




自家発電の余剰エネルギーは、イタリアの電力会社は買う義務があります。この付近を仕切るEnelは、サンドロ宅から出た使わないエネルギーを、Enelの販売価格と同じ金額で買い取ってくれます。
それに加えて、政府からプラスアルファ、販売電力に上乗せしてくれるのです。

そのため、最近では、自分たちが儲けるために…と農地をつぶして、ソーラーパネルをたくさん作り、田舎の風景を壊してしまうケースがあとをたちませんでした。
でもサンドロは「美しい風景を壊してまで儲けに走ること」に反対です。
自前の電力は、自前のエネルギー消費分に応じた自家発電規模にすべき、というのが彼の意見です。
by butako170 | 2011-08-24 04:30 | ウンブリア地元ネタ
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