昨晩、終電にてフィレンツェから帰ってきました。 2日間にわたり『イタリアの福祉を学ぶ』目的で、愛知のO様のアテンドを務めました。 初日は、後見人制度について。 弁護士のもとを訪れ、イタリアの老人や障害者を取り巻く後見人制度の状況をリサーチ。 *後見人制度とは、痴呆や知的障害によって、判断力の低下している人の身辺のケアや財産の保護、財産決定などを代行して行うもので、日本では最近『後見人』を立てる人も増えているのだとか。 方や、イタリアでは、Tutore、Curatore、Amministratore di sostegnoという3つの役割が混在し、新旧の方法がそれぞれ踏襲されている模様。 そして2日目は、ミゼリコルディア(Misericordia)という非営利法人を訪問し、丸一日、活動を見学しました。 ミゼリコルディアは、福祉のエキスパート。なんとその歴史はとてつもなく古く1244年からと、言うではありませんか! あなたがフィレンツェのドゥオーモに行ったなら、是非、鐘楼のある側に行ってみてください。 救急車とオレンジ色の緊急作業服に身を包んだスタッフが待機する様子を見ることができます。 そう、『病人を運んで手当てする』という活動は、創業時から変わっていません。 そして従事者のほとんどがボランティアスタッフだというではありませんか! 救急車派遣所は、フィレンツェ市内で3つ。 そのうちの一つが、オフィスや博物館、教会も備える、このドゥオーモ前の詰め所です。 入ってすぐのところには、集中司令室ともいえるコールセンターが。 ここは、118番通報を受けた消防署の電話とつながっており、消防署から救急車の要請が入ります。 担当者は、左奥のモニターに映しだされている自家救急車の居場所をすぐさま確認しながら、消防署の要望に迅速に応えていきます。(各救急車にはGPSが搭載しているので、居場所がすぐ分かるのです) 救急隊員は、ボランティアの場合もある・・・と聞かされてびっくり。 救急車は3種類あり、①専門医師搭載で、高度な医療処置のできる車 ②医師搭載だけど普通の処置のできる車 ③ボランティア搭載で処置が制約される車 と分かれているそうです。 もちろん、患者さんの具合により①~③が指定されていきます。 ミゼリコルディアでは、病人やけが人を運ぶ救急隊の仕事を皮切りにして、他にもたくさんの事業を行っています。 総合診療所、障害者施設、老人ホーム、お墓などなど。。。 特に印象に残っているのが、このマーケット。 なんと低所得者が、お金を払わずに買い物できるんですって!! 市内に2つある店舗それぞれに、一人の従業員とその他大勢のボランティアが働いています。オープンするのは、週に2~3回。 利用家族は、まずミゼリコルディアに申請をし、月極めのポイントがインプットされたカードの支給を受けます。ポイントはその家の家族構成や所得によって変わります。 マーケットのそれぞれの商品にはポイントがついているので、月に支給ポイントを使いきるまで買い物ができます。 しかしまぁ、タダで提供だなんて、なぜにこんな大盤振る舞いができるのかしら。 この経済危機のお寒い時代に。。。 実はマーケットに陳列されているほとんどのものが、普通のスーパーマーケットからの頂きもの。賞味期限が迫ってきているもの、パッケージが少し壊れてしまったけど売り物になるものなどが、提供されています。 このお店の名は12のカゴ(dodici cesti)と言いますが、イエス・キリストが増やしたパンの奇跡にちなんでいます。イエスの教えを聞きにきた3千人の民衆たちに、わずかなパンと魚を配ったら、なんと皆が満腹するまで増え続けたのでした。 その残ったパンを集めると12のカゴがいっぱいになったのです。 なので、余って廃棄されるべきものも有効に使いましょう・・・ということでこの名がついたそう。 ちなみに、店は、コムーネから慈善事業の目的で90%オフで借りています。 店内は他のスーパーと同じようにして、施しを受けている、という惨めな思いを抱かせない配慮をしています。それが利用者の尊厳に関わることだから。 印象に残ったのが、老人ホームでの食事でした。 老人ホームBobolinoの食事は、グルメな入居者も喜ぶメニュー満載でした。 ミゼリコルディアの関係者の方々と、Bobolinoの1800年代後半のソフトな光が差し込むサロンで食事を頂いたのですが、どれもこれも美味!トスカーナの料理がベースで、思わず毎日、食事が待ち遠しくなってしまうようなメニューです。 食事はプリモ2点、セコンド2点から1つずつ選ぶことができ(選べるのってうれしいですよね)、手際の良いサービスで、待たされることなく熱々の食事ができるのです。もちろん、ワイン処トスカーナなので、希望者にはワインも頂くことができます。 この日のメニューは、私たちのために特別用意してくださったトスカーナ風前菜、タリアテッレ、ペンネ・アル・ラグー、アリスタとポテトのローズマリー焼き、豆とサルシッチャのトマト煮込み、そしてトスカーナ風ドルチェの盛り合わせでした。季節柄、サンジョゼッペのフリッテッレやカーニバルに付き物の揚げ菓子チェンチなどが一緒盛りに。もちろんビンサントには、カントゥッチを。 とっても美味しかったですよ~! 入居者は自立している老人専用なので、自由度がすごく高かったです。外出もOK。 演劇や演奏会などの出し物もあり。どの人も活き活きしています。 ボボリーノからの移動中、ミケランジェロ広場で最高の景色を楽しみました。(最初の写真) ここでは、障害者施設の人たちが、日光浴をしにきていました。移動車がたくさんあるミゼリコルディアだから、利用者の移動も簡単ですよね。 多くのボランティアと素晴らしい社員たちで構成されているミゼリコルディア。 多岐にわたる活動の要と言えるのは、オーダーメイドのソフトウエアです。無駄なく無理なく組織が動けるように、システムの構築は、絶対不可欠といいます。 また総勢100人を超えるボランティアが、救急隊やメルカート、介護や運転、はたまた名誉職についています。無償だからといって手抜きすることなく、質の高いサービスを利用者に、笑顔をもって提供しています。 だれもかれもがごく普通に、でも誇りと喜びを持って携わっている・・・見学の際に接したボランティアの印象はこうです。 コーディネートをしてくれた副秘書のアンドレア・モリーノ氏は、弱者を慈しみ助る精神が、フィレンツェにはもともとあったけれども、それを僕達は今も持ち続けている。 ミゼリコルディアは、市民の憧れでもあるんですよ。 ボランティアの平均年齢55歳だといいます。 そのほとんどが学生かリタイアした後の壮年だそうです。 皆さん、自由な時間を、人のために使っているのですね。 結局、人に与えることによって自分が受けているんだよ。 というモリーノ氏の言葉に、受けるより与える方が幸いです・・・というイエスの言葉を思い出しました。 これから老人の数が急ピッチで加速するトスカーナ州。 時代の変化に対応しながら、質の良いサポートを提供してくださいね。 助け合いの精神を胸に、フィレンツェを後にしたbutakoなのでした。 (このピンバッチ、頂きました) butako
by butako170
| 2011-04-01 05:56
| 旅行記
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